スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

オリジナル 

 ゆっくりと、慎重に言の葉を紡ぐ。
 目には見えないがはっきりとリアとリュオンの『眼』には見えていた。

 細い金の糸を紡ぐように慎重に、優しく。そして『金の糸』によって包み込む。決して切れてはいけない。均等に、慎重に。怒らせてはいけない。起こしてはいけない。

 リュオンは二度目の体験ではあるが、リアにとっては何もかもがはじめての体験で、何をすればいいのか全くわからない。それなのに、体ははじめから知っていたかのように動く。

――眠りなさい、安らかに
――沈みなさい、意識を彼方に

 朗々と響く言の葉たちはまるで子守唄のように、そっと意識を沈ませる。
 金の糸は綺麗に纏め上げていた。彼を包み込むように、そっと眠らせるゆりかごのように。

 二人が紡ぐ金の糸は繭というゆりかごを作り上げた。


――我が名は『星の彼方』
――我が名は『淡き夢』
――眠りなさい、安らかに
――沈みなさい、眠りなさい

 糸をつなげると、まるではじめからそこに存在していたかのように、淡い金色の繭がそこにあった。


「・・・おわり?」
「ああ、終わりだ」

 リュオンが静かに顎を引くと、リアは崩れ落ちるように地面に座り込んだ。石の床は、ひんやりと冷えていて疲れた体に染み入った。
 できればこのまま眠ってしまいたいほどに疲れていた。
 リアの心情がわかるのかリュオンは苦笑して、床に膝をついた。指先で床に刻まれた紋様をそっとなぞる。
 彼の金糸がさらりと流れ落ちて、リアからはリュオンの表情が見えない。

 笑っている気がした。

 それが、少し嬉しくてリアは仰向けに倒れこんだ。そうして、視界いっぱいに広がったそれを見て、静かに眼を閉じた。


「ねえ、リュオン」
「・・・なんだ」
「天井にお花畑が描いてあるよ」
「花畑?」
「ほら」

 リアに促されてか、リュオンも上を向く。次第に彼の目が大きく見開かれていく様はリアには容易に想像ができた。


「これは・・・」
「お花畑だよ?」
「花畑? これが?」
「『上』に広がってるんだ、きっと。お爺様がお好きなお花畑」

 たとえ、リュオンにはその模様がただの紋様にしか見えなくとも、リアには花畑に見えるのだ。
 それは目の錯覚とかそういうものでは決してなくて、リアに流れる特殊な血が、紋様を絵に見せる。
 眼を閉じて、リアは「お爺様」を思った。会ったことはないが、優しい「人」なのだろう。

「お爺様って、あの方をそう呼べるのは世界中でお前だけだろうな」

 リュオンが苦笑している。リアには眼を閉じていてもわかる。
 はじめは怒っているのかも、笑っているのかも想像つかなかった彼を少しだけわかるようになったことが嬉しかった。

 だから、彼が次に言い出す言葉も少しだけだがわかる。リアも言うならその言葉だ。


「帰ろうか」
「帰ろう」


 待っている人の下へと、帰ろう。そして、暖かいシチューを一緒に食べよう。




 『上』で、彼女が笑った気がした。



***

 なんとなく、オリジナルの最終話だけ書いてみた。
スポンサーサイト

Comment

Post comment

Secret

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。